大判例

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大阪地方裁判所 昭和56年(行ウ)40号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

一原告は、被告が原告に対し、昭和五五年四月三〇日付をもつて原告の退職手当金を金二五八〇万五七二四円とする旨の決定をしたとし、右決定は行政処分であるとしてその取消を求めているところ、被告は、原告の退職手当金は、原告の退職と同時に府条例に基づき確定するものであつて、被告の行為によつて確定するものではないから、原告主張の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分ではないと主張する。

よつて検討するに、抗告訴訟の対象となる行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為とは、行政庁がその優越的な地位に基づき、権力的な意思活動としてする行為であつて、その行為により、個人の法律上の地位ないし権利関係に何らかの影響を及ぼす性質を有するものであると解すべきところ、大阪府の職員の退職金については、府条例(昭和四〇年三月二七日大阪府条例第四号)により、退職した職員のうちで退職手当の支給を受け得る職員の対象及びその額が、その勤務年限や退職の事情等に応じ、確定的に定められており、被告において、右退職手当金請求権の存否及びその額を決定する権限を有する旨定めた法令上の規定はないから、大阪府を退職した職員が、大阪府に対し、その勤務年限に応じて、一定額の退職手当金を請求し得る権利は、右府条例により、直接実体上の権利として、当然に生ずるものであつて、被告が、右退職手当金請求権の存在を肯定し、その額を決定することによつて、始めて生ずる権利ではないと解すべきである。してみれば、被告が、原告の退職手当金額を金二五八〇万五七二四円とする旨決定したとしても、右決定(少なくとも、原告が不服を主張している部分、以下同じ)は、府条例に基づき、一定額の退職手当金を大阪府に請求し得る原告の実体上の権利に何らの影響をも及ぼすものではないというべきであるから、原告は、被告のなした原告主張の右決定の取消をまつまでもなく、大阪府を相手方として訴を提起し、実体上発生した退職手当請求権に基づき、その支払を求めることができるものと解すべきである。

よつて、被告が、原告主張の如く、原告の退職手当金額を金二五八〇万五七二四円とする旨決定したとしても、右決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分ではなく、単なる事実確認行為に過ぎないものというべきである。

二もつとも、原告は、地方自治法二〇六条に「処分」という文言があることを一根拠として、原告の退職手当金を金二五八〇万五七二四円とする旨の前記被告の決定を行政処分であると主張しているけれども、前述のとおり、被告には原告の退職手当金額を決定する法令上の権限はなく、原告の退職手当金額は、府条例によつて直接定まり、かつ、具体的な請求権として発生するから、被告の右決定は、単なる事務的な確認行為に過ぎないものというべきである。したがつて地方自治法二〇六条に「処分」という文言があるところから、被告の右行為をとらえて、抗告訴訟の対象となる行政処分とはいえないから、右原告の主張は失当である。

また、原告は、被告の前記決定は、行政不服審査法の対象となる「処分」であるから、当然抗告訴訟の対象となる行政庁の処分その他の公権力の行使に当たる行為になりうると主張するけれども、行政不服審査と行政訴訟は、その趣旨、目的が異なつているから、被告の前記決定が、行政不服審査法の適用を受ける処分として、これに対する審査請求、再審査請求が適法に受理され、右各請求についての裁決等がなされたからといつて、右決定が当然抗告訴訟の対象となる「処分」に当たるものとは認め難い。したがつて原告の右主張も採用できない。

(後藤勇 千徳輝夫 小宮山茂樹)

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